"Arvoles" Avishai Cohen

1_873.jpg
ベーシストのAvishai Cohenのリーダー作。彼のリーダー作は、前作が、2017年の"1970"(https://jazz-to-audio.seesaa.net/article/a64310084.html )で、その前が2015年の"From Darkness"(https://jazz-to-audio.seesaa.net/article/a63132183.html )というペースです。
さらに、1作おきにイスラエル色とジャズ色の濃度が逆転する作品がリリースされていまして、前作はイスラエル色が濃く出た作品だったので、本作はジャズ色が濃く出ている作品であると予測できます。
(2年後に、次作が出るときには、こんなことは完全忘却なんですけどね.. orz )
そんなアルバムのメンツは、以下のピアノトリオ構成を中心に、2管がはいるもの。
ピアニストもドラマーも知らない名前なので、イスラエルから連れてきた若い逸材であろうことが推測できる。
Avishai Cohen(B)、Elchin Shirinov(P)、Noam David(Ds)
Bjorn Samuelsson(Tb)、Andres Hagberg(Fl)

演奏曲は、2曲めのトラディショナルを除いて、すべてAvishai Cohenのオリジナルで、全部で9曲。
01 Simonero
02 Arvoles
03 Face Me
04 Gesture #2
05 Childhood (for Carmel)
06 Gesture #1
07 Nostalgia
08 New York 90's
09 Wings

1曲め、3曲めといつもの中東フレーズを駆使した楽曲を並べてくる。
これまでも、多くの若手ミュージシャンをイスラエルからNYに連れてきている実績があるが、おそらくそんなNYに慣れていない面々に、土着のフレーズでの手慣れた演奏をさせることである種の安心感を持ってもらおうとかそんな思惑があったりして。
と、今更ながら思い至ったくらい。
2曲め、4曲めは、ビート感も強くなく中東色も希薄めな、良い意味で平易な気配を持った曲を挟んできていて、中東色の濃淡で全体のバランスを取っているような印象。
通して聴いていて、おッと思う場面がいくつか出てきたが、その大半がピアノは単純フレーズを奏で続けるなか、ベースが即興フレーズを奏でているようなところで、それだけベースの存在感はずば抜けているのは疑いようのないところ。
そんなピアノは、もちろんソロもあるし、前面での露出度も低くないが、あまり派手に振る舞う感じでもなく、どちらかというと2管とともにテーマのアンサンブル要員って気配もなきにしもあらず。
ここでの演奏では、ドラムのほうがありきたりにならない創造的な演奏を繰り広げていて、個人的には面白く聴いている場面が多い印象。
数曲でTb、Flが入っているが、アンサンブルの音の厚み出し程度の起用といった程度で、入ることでの効果はあったと思うが、あまり印象に残る感じでもないのかなぁ。
そしてベース。
前述の通り、ピアノに2管をも露払いに使って独壇場といっても良いほどに前面に出た演奏を繰り広げる。
特にアルコ弾きで、インパクト強力、エモーショナルで印象深いフレーズが多く飛び出してきている印象で、はっきり言って他の楽器無視してベースだけ追ってても充分じゃないかってくらいに八面六腑な活躍を見せる。
ピアノトリオどころか、クインテット編成でも主役を譲らない、自己主張を盾に他の4人に負けていない。
そんなAvishai Cohenの底力というか、底恐ろしさみたいなものを垣間見せる作品とも言えそう。
そう考えると、新人発掘プロジェクトが、新人発奮プロジェクトに聴こえてくるから、今後のAvishai Cohenのリーダー作がどうなっていくか興味津々になってみたり。
ベストは、5曲めにしましょう。

この記事へのコメント

2019年08月09日 20:57
 私はこの Avishai Cohen のアルバムを聴いて、はてさて私は彼のアルバムに今まで何を求めてきたか、むしろ疑問になってしまった。
 アルバム・タイトル曲は2曲目の"Arvoles"で、Traditionalとのことだが、この曲の懐古的世界は解らないでもないが、今このアルバムを聴く者に何か訴えてくるものがあるのだろうか。
 こんな感じで聴いてゆくと、むしろトロンボーン、フルートのはいる4曲はピアノ・トリオの味を消してしまっているしどうものめり込めない。
 まあ異世界からの音として聴くと言うことには抵抗はないが、どうもただそれだけに終わってしまった感があった。
TBとして記させてください(↓)
Http://osnogfloyd.cocolog-nifty.com/blog/2019/06/post-e1df05.html

oza。
2019年08月12日 20:51
>(風呂井戸)さん
Avishai Cohenの作品は、記述の通り(基本情報として)交互にテイストが異なる作品を出していると認識しています。

本作は、それに加えて特にイスラエルの新人をNYに紹介するというところが大きいように感じています。
それが故に「何を求めてきたのか」という部分にゆるみが出てきているんだと思います。
悪く言えば、人気にあやかって好き勝手やってる部分が増長されているということでしょうが、
良く言えば、自身の人気を利用して新しい才能の台頭に助力しているということなんで。
買う、買わないという選択肢を駆使することで、当人に、ファンとして何が有用で何が無用かを知らしめることが肝要かと思っています。

>TBとして記させてください(↓)
>Http://osnogfloyd.cocolog-nifty.com/blog/2019/06/post-e1df05.html
tbありがとうございます