"Out Of The Dawn" 大西順子

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大西順子の新作は本人が演奏していない大所帯作品。
2009年 "楽興の時" (https://jazz-to-audio.seesaa.net/article/a58339374.html )、2010年 "Baroque" (https://jazz-to-audio.seesaa.net/article/a59770572.html )と立て続けにアルバムを出した後、少しのインターバルをおき、2016年頃から精力的に活動を再開し、トリオ作を中心に次々と作品を発表。
 "Presents Jatroit Live At Blue Note Tokyo" (https://jazz-to-audio.seesaa.net/article/470542776.html )
 "Unity All: Live At Pit Inn 完全版" (https://jazz-to-audio.seesaa.net/article/476745376.html )
5年で本作を含めて8作もリリースしているのは、あらためて凄いと思う。
最近は、吉本章紘、広瀬未来を音楽監督に据えての活動が中心になっているはずで、本作もその流れでのラージアンサンブル作品ということで良いと思います。
が、自身が演奏しないってのは、凄い決断だと思う。

メンツは以下の通り。直上にも書いた通り大西順子は演奏をしておらず、ピアニストに武本和大、スガダイローを招聘しています。
David Negrete(Sax)、吉本章紘(Sax)、曽我部泰紀(Sax)、陸 悠(Sax)、本間 州(Oboe)、佐藤芳恵(Bcl)
広瀬未来(Tp)、佐瀬悠輔(Tp)、和田充弘(Tb)、池本茂貴(Tb)、青地宏幸(Tb)、
松永 敦(Tuba:11,12)、中澤幸宏(Horn:11,12)
井上陽介(B)、武本和大(P)、スガダイロー(P:1,5)、馬場孝喜(G:7,8)
濱田省吾(Ds)、吉良創太(Ds)、大儀見元(Per:1-7)
大西順子(Produce)

演奏曲は、広瀬が組曲(2-6)と2曲(10,14)、吉本が3曲(1,7,8)、井上が3曲(9,11,12)を持ち寄り、Joni Mitchelを1曲加えて全部で14曲という構成。
1.Naughty Ghost
2.組曲:Suite Estacionesより - I. Giraudo (Invierno 冬)
3.組曲:Suite Estacionesより - II. Voluntad (Primavera 春)
4.組曲:Suite Estacionesより - III. Interludio (Verano 夏)
5.組曲:Suite Estacionesより - IV. Bullicio (Tormenta 嵐)
6.組曲:Suite Estacionesより - V. Carnaval (Otoño 秋)
7.Won't Cry Anymore
8.Radio Engulfed in Sandstorm
9.Metamorphosis
10.Embers
11.Rise’s Triangle
12.Blue Flower
13.Both Sides Now
14.In Need

いくつかのグループと単楽器とが、緻密に細かくフレーズの交歓をしていく、かなり複雑に凝ったアレンジになっていることを感じさせるサウンド。
印象だけではあるが、米国のラージアンサンブルと比較すると、バタ臭さみたいなものが希薄で、より淡麗な印象を持つのは日本人のアイデンティティみたいなものなのか、はたまた大西の嗜好に沿った結果なのか。
アンサンブルの音の重なりのアイデアばかりでなく、楽器の音色なんかでも変化をつけていたり、さまざまな技でオッと思わせるような場面を作り出しているところが楽しい。
3人の作編曲だからというのもあると思うが、全部で14曲よくぞこれだけのアイデアを引っ張り出してきて、多彩なサウンドを寄せ集めたもんだ、と感嘆する。
聴くたびに次は何が出てくるんだと毎回ワクワクしながら聴き進めてしまう。
曲によって、広瀬、吉本、井上、とその他の楽器もいくつかがしっかりと長いソロを取る場面があり、これも耳を惹きつける印象的な場面。
2曲で客演しているスガダイローのその圧倒的な個性は強烈で、独特の節回しによるフリーキーなサウンドが鳴り響くと、場の雰囲気を支配してしまうだけの力量を見せつける。
大西の役割は、楽器編成を決めることもそうだと思うが、作編曲の3人の個性を殺さず、アルバム全体の雰囲気を一貫したものにするようなところにもあると思う。

ベストは1曲めにします。

"Out Of The Dawn" 大西順子 (https://www.amazon.co.jp/dp/B093RZGFJJ/ )

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