"Aldeia Coracao" Antonio Loureiro
一時期ブラジルものを多く聴いていた時期がありました。
そのきっかけの大きな1つになっているのが、Antonio Loureiroの "SO" (http://jazz-to-audio.seesaa.net/article/a61798990.html )というアルバムでした。
世の中もこのアルバムが出た頃からブラジル音楽が脚光を浴び、Andre Mehmari, Kristoff Silva, Alexandre Andres なんて面々のアルバムも日本で紹介されていました。
そのAntonio Loureiroのリーダー作は "Livre" (https://jazz-to-audio.seesaa.net/article/a64670921.html )以来フィジカルでは出ていないはずです(ずっとチェックはしていた)
が、よくよく調べると配信では5つくらいあったようで、bandcamp (https://antonioloureiromusic.bandcamp.com/ )にあるのが全貌のようです。(半分くらいシングル?)
そのうちの最近作を聴いたのでその紹介ってことになります。
メンツは以下のとおりで、曲毎に代わっていてダイジェスト的に下記しておきます。
Antonio Loureiro(Ds,Syn,G,P,Org,B..)
Conrado Goys(G:2)、Alberto Continentino(B:4)、Guto Wirtti(B:8)
Luana Saggioro(Vo:2)、Marina Marchi(Vo:5)
Gil Silva(Ts,Ss:2)、David Binney(As:7)、Hugo Caldeira(Tb:2)
Luka Milanovic(Viola,Vln:2,4)
演奏曲はすべてAntonio Loureiroのオリジナルで良さそうです。
1.Aldeia Coração
2.Roda dos Amantes
3.Um Novo Amor
4.Será
5.Compaixão
6.Sem Ar
7.Vai Cair
8.Aurora
9.Buniti
不安定な和音とその進行を使い、さらにリズムもちょっと不安感を煽っているのが、いわゆるAntonio Loureiroのサウンドらしい感じで、彼のそんなサウンドがそんなだったのをちょっと思い出してきた。
彼の音楽的語法の核心部分であるこの手法は、聴き手を心地よい居場所から引き離し、常に緊張感のある音響空間へと誘う。
調性感が曖昧になる瞬間と、かろうじて安定を保つ瞬間とのバランスが絶妙で、これこそが彼の作品に独特の浮遊感を与えている要因だろう。
多くの打音で厚く鳴る打楽器の響き、それに負けないくらいの電子音だったり弦楽器だったり他の音源だったりが厚みを持たせたアンサンブルを重ねてくる。
特に印象的なのは、アコースティックな楽器と電子音響の境界線が曖昧になる瞬間で、有機的なサウンドと人工的な質感が溶け合い、独特の音響世界を構築している。
打楽器群は単なるリズムセクションを超えて、メロディラインと対話する重要な役割を担っており、楽曲全体に立体的な奥行きを与えている。
ボーカルは、Antonio Loureiroを中心に女性ほかゲストが入るような構成。
複数の声が織りなすハーモニーは、時として対位法的に絡み合い、時として一体となって響く。
Antonio Loureiroの声は少し加工されているんだと思うが、生の歌声とエフェクトが施された部分が巧妙に組み合わされており、感情的な訴求力を保ちながらも、どこか超現実的な印象を与える。
ゲストヴォーカルとの掛け合いや重なり合いは、楽曲に多層的な表現力をもたらしている。
最後の曲がほぼピアノソロで奏でられ、美しく静かに終わりを迎える。
この構成は非常に効果的で、それまでの複雑で濃密なサウンドスケープから一転して、シンプルな美しさに回帰する。
ピアノの響きは透明感がありアルバム全体の余韻を丁寧に処理している。
ベストは8曲めでしょう。
"Aldeia Coracao" Antonio Loureiro
この記事へのコメント