Logan Richardson "Shift"

イメージ 1

Logan Richardsonという1980年生のアルト奏者の3枚目のリーダー作です。

2013年に録音された自主制作盤を、日本のレコード会社が見つけ出して正式リリースさせたってことのようです。
メンツがメンツなので、目ざとく見つけたなって印象を持つのは (^^;;

しかし、Pat Methenyが全面参加したアルバムは、Michael Breckerの遺作
"Pilgrimage"(http://jazz-to-audio.seesaa.net/article/a47517524.html)以来とのこと。
Pat Methenyは、Michael Brecker没後永らくサックス奏者との共演をしておらず、
Unity BandでようやくChris Potterをレギュラーに迎えて今に至っているわけで、この盤でLogan Richardsonのリーダー作に全面参加したってのは、彼の実力をかなり買っているということになるので、そういう意味でも興味津々の作品ではあります。

とはいえ、2015年11月の時点で、amazon.com、amazon.fr(フランス在住の米国人なので、この2つのサイト)で現地盤のリリースはないので、かの国の人たちがどう思っているかは..w

ちなみに、前2作は下記の通り、2007、2008年の作品のようです。
 “Ethos”(https://www.cdbaby.com/cd/lrichardson)
 “Cerebral Flow”(https://www.cdbaby.com/cd/loganrichardson)

自blogで、Logan Richardsonを検索すると3枚の参加作がヒット(下記)しましたが、演奏について特に言及してないので、特に耳目に引っかかるものではなかったんでしょう。
 Next Collective "Cover Art" (http://jazz-to-audio.seesaa.net/article/a61939992.html)
 Yaron Herman "Alter Ego" (http://jazz-to-audio.seesaa.net/article/a61695247.html)
 Walter Smith III "III" (http://jazz-to-audio.seesaa.net/article/a60087231.html)
さらに、2008年最後の新譜試聴会で、リーダー作“Ethos”を気になる盤に挙げてました。
が、このとき購入までは至っていないのはこの回で気になる盤が多過ぎたからということにしときます。

気になるメンツは以下の通り。Pat Metheny、Jason Moran、Nasheet Waitsですからねぇ、大したもんです。
Logan Richardson(As)、Pat Metheny(G)、Jason Moran(P)、Harish Raghavan(B)、Nasheet Waits(Ds)

演奏曲はすべて、Logan Richardsonのオリジナルで全部で13曲。
01 MIND FREE
02 CREEPER
03 IN YOUR NEXT LIFE
04 LOCKED OUT OF HEAVEN
05 SLOW
06 WHEN I WAKE (interlude)
07 IMAGINE
08 ALONE
09 IN BETWEEN (interlude)
10 TIME
11 UNTITLED
12 DREAM WEAVER
13 SHIFTING SAND

冒頭、ギターとピアノが奏で、ドラムが絡んでくるイントロ、このギターサウンドがいわゆるPat Methenyサウンドではなく、本当にPat Methenyが参加しているのか?と訝(いぶか)るのですが(笑)、直後のいくつかのごく短いフレーズがPat Methenyでちょっと安心するという。1分過ぎ前後におもむろにサックスが...。
この曲が、ちょっと(Robert Glasper)前の現代ジャズ的なサウンドの曲調だが、かなりな変拍子、転拍子で、サビは5拍子だがソロパートとか各人が自由に演奏しててフリーな雰囲気が強めに出ている。後半でギターソロが入って、これはPat Methenyだぁと思うと終了。
2曲めが8ビートでリズムがしっかりキープされた、ちょっと哀愁感ある旋律の曲。
これも4分40秒過ぎにPat Methenyのソロが始まるが、ここではギターシンセでPat Methenyの代名詞的サウンドが聴けるので、こんな演奏が聴けるとPat Methenyだけを目当てに買った人も、まぁ満足できるか。
3曲め以降も、大雑把にはちょっと(Robert Glasper)前の現代ジャズ的なサウンドという範疇にくくれそうな曲が並ぶが、特徴的なのがフリーの要素を多く含んだ曲が多いこと。
5者が巧妙なアレンジにのっとって調和のとれた演奏をし、曲のリズムに乗ったソロを繰り広げると言うよりは、(それが仕組まれているのかもしれないが)拍もリズムも関係なく自由にカオスな演奏を繰り広げている場面が印象的。
決して(Pat Methenyだけ多少例外か)、フリークトーン、絶叫音、ノイズのような音色でのフリーではなく、静かな狂気が満ちているような印象。

Pat Methenyが、それぞれのシチュエーションで、様々な音色で様々なスタイルのソロを繰り広げ、オーソドクスなスタイルからフリーからとほとんど曲調を無視して気分に応じて好き勝手に演奏しているんじゃないか(これをきっかけに演奏がカオス化してる?)というくらいだが、これが全体にいい刺激を与えて演奏全体の方向性を決めているというのはあるのかもしれない。
Jason Moranは生ピとエレピを使い分けて、変拍子多めの楽曲を変幻自在かつしなやかに印象的な旋律をふりまいてかなりの好印象。しかし良いピアニストです。
Nasheet Waitsも、特に演奏の骨格を形成する意識ではなく、リズムを自分から崩していくような演奏を多用していて変に面白い。
Logan Richardsonは、線がちょっと細目のきれいな音色で、けっして破綻せず冷静な演奏をするタイプ。ブチ切れなくても良いがもう少し熱気のある演奏をしても良いようなと思ってしまう。

ベースのHarish RaghavanとLogan Richardsonが演奏の骨格をしっかりキープして残りの実力者3名に自由な空間を文字通り自由(フリー)にイマジネーションを広げてもらうスタイルと考えるとそれがコンセプトなのかもしれないと思い至った。

ベストは、7曲目ですかねぇ。


Logan Richardson "Shift"(http://www.amazon.co.jp/dp/B013PRSVBY/)

この記事へのコメント