福盛進也 "For 2 Akis"

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ECMから日本人のリーダー作が出るという情報に少し驚いたのですが、過去には、菊地雅章さんがリーダー作を出していて、ジャズとしては2人めになるとのこと。
ただし、初リーダー作がECMとなると、それはちょっとニュースでしょう。
米国でジャズを学んだあと、ミュンヘンに移住したドラマーで、もともとECMぽいサウンドが好きだったようです。

メンツは、以下の通り。Walter Langも、Matthieu Bordenaveも初めて聴く人のはずです。
Matthieu Bordenave(Ts)、Walter Lang(P)、Shinya Fukumori(Ds)

演奏曲は、宮沢賢治の星めぐりの歌、美空の歌唱で有名な愛燦燦、滝廉太郎の荒城の月と日本人にはお馴染みの曲が並び、他は、福盛が3曲(2,4,7)、Walter Langが2曲(6,10)、Matthieu Bordenaveが1曲(9)等々といった布陣。
1. Hoshi Meguri No Uta
2. Silent Chaos
3. Ai San San
4. For 2 Akis
5. The Light Suite ~Kojo No Tsuki* / Into The Light / The Light
6. No Goodbye
7. Spectacular
8. Mangetsu No Yube
9. Emeraude
10. When The Day Is Done
11. Hoshi Meguri No Uta (var.)


Matthieu Bordenaveの実に丁寧に奏でられるサックスの音色にうっとりとさせられ、Walter Langの音数を必要なだけに絞ってフレーズも必要以上に遅くも速くもしない絶妙な指さばき。
ピアノの響きを活かし、さらに余韻を感じさせるサウンドが美しい。
5曲め後半こそ速い演奏を聴かせるが、それすら音の響きを聴かせる所作と感じさせる。
福盛のしっかりとコントロールされたシンバルを中心に注意深く鳴らされるさまざまな打音の繊細な響きが、そこはかとなく緊張感を醸し出す。

3者とも全体的には音数は少なく静謐な雰囲気に満たされるが、それでいて演奏の密度はとても濃く感じられる演奏。

曲としては、前述の通り日本人にはおなじみの曲が多く並ぶが、おそらく日本人以外にはエキゾチックな雰囲気を感じる旋律と予想される。
日本人としては、ノスタルジックな気分が少なからず出てくるのは致し方ないところ。
できることなら日本を知らない耳で聴いてみたいとも思わせる。

録音では演奏にも口を出してきたという、Manfred Eicherの美意識をしっかりと反映させた見事なECMサウンドに仕上がっている。

ベストは、11曲め。最後に最初の曲のバリエーションが入るがこれが染みてくる。


福盛進也 "For 2 Akis"(https://www.amazon.co.jp/dp/B077Y6WRTP/)

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